個別銘柄分析方法

グレアム流の企業価値分析方法は、流動資産から負債を差し引いた額が企業の解散価値(正味価値)という単純なものです。

企業価値=流動資産-全負債

この計算では、企業が解散したあと、実際に株主持分として残る資産に近い額が算出されます。

その意味では、BPS(一株当りの純資産額)やPBR(株価純資産倍率)を用いて企業分析をするより、保守的(堅実的)な視点から企業価値を算出できます。

PBRだけで企業分析をする場合、負債額は全く評価していないため、PBRが低くても実際に企業が解散した場合、資産のほとんどを負債に差し押さえられ、株主に返還される資産はほとんどない場合も考えられます。

ただし、現在、流動資産から全負債を差し引いた額より、時価総額が低い企業はほとんどないと思います。

そのため、加味する資産を流動資産だけではなく、固定資産の一部も加える方が現実的だと思います。

企業価値=流動資産+(固定資産×0.5)-全負債

固定資産をどの程度企業価値に参入するかは、固定資産の内容(土地or建物or関連会社株式or無形固定資産など)によって掛率を変えるとよいと思います。
現金化しやすい度合いに合わせて、
土地 0.7倍
建物 0.3倍
関連会社株式 0.5倍
無形固定資産 0倍
など設定するとよいと思います。


また、流動資産にも売掛金などが現金化できるか不明の資産もあるため、0.7倍などの掛率を設定して計算すると、より保守的な企業価値分析ができると思います。

(例)
流動資産 100億円
固定資産 100億円
負債   50億円
株式数 100万株
流動資産の掛率を0.7倍、固定資産の掛率を0.5倍と仮定する。
企業価値=(100億円×0.7)+(100億円×0.5)ー50億円
    =70億円
一株当りの企業価値=70億円÷10万株
         =7000円
となります。

そして、株価が7000円を下回っている場合、解散企業価値を下回っているため買った方がいいという判断ができます。また、株価が7000円を大きく上回っている場合、買い控えるという判断ができます。

※以上の企業価値分析は、貸借対照表(バランスシート)上のみを分析対象としており、業種・企業規模・収益力・技術力・今後の成長性などは全く分析対象には入れていません。

それらの要素をどの割合で企業価値分析に含めるのかは、投資家個人の好みによると思います。ただ、上記のように流動資産と固定資産の一部のみを企業価値分析に参入する方法は、最も保守的(堅実的)な計算方法だと思います。
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